石田敦子個展 【箱】始まっています。
石田さんは作品も面白いのですが、文章も素敵なので、作品には文章を添えてもらうようにしました。じっくりと読んで頂いてありがとうございます。
アクリル画 【彼女の肩にかかる箱】
彼女の肩には、糸が垂れていて、その先には箱がぶら下がっている。
年を重ねるごとに増えていく箱に何が入っているのか?
それは、彼女自身も知ることができなかった。
おそらく箱に入っているものは
しっとりしみ込んだ 哀しみであり
どこまでも深く つかまえることのできない 暗闇であり
乾いた音の鳴る 空っぽであり
あたたかい春の日差しのような 眠気であり
舌に残る 甘い チョコレートで あったりする
と彼女は想像する。
ただ現実的に
増えてしまった箱は 彼女を大きく悩ませた。
箱のせいで
彼女はひどい肩こりになっていた。
しかしこれらの箱を誰も取り除くことはできなかった。
整形外科の医師はそんなものはないけどと言いながら
湿布だけくれた。
鍼灸師はうーんと唸った。
ただごくまれに
彼女の意図もなしに
肩の糸がぷつっと切れて、箱は落ちるとともに消えた。